卓上四季(北海道新聞)そのまま記載

春なのに木が芽吹かず

鳥が少ない。原因は

殺虫剤のDDTなど化学薬品だ、

とレイチェル・カールソンが

沈黙の春」で喝破したのは

一九六二年のことだった

▼忍び寄る危機を警告する人は

いても、認識が広がる

には時間がかかる。

米政府がDDTを禁止したのは、十年後だつた。

人間の活動がもたらす

地球温暖化も例にもれない。

科学者による最初の指摘は

十九年前だ

▼さきごろベルギーで開かれた国際会議は、

平均気温の上昇を二-三度に抑えねば

二〇二〇年ごろ

水不足に苦しむ人が数億人も

出ると報告した。国際協力が

急務だが世界一の温暖化ガス

排出国である米国には

なんとしても抑えるという気構えが

見えない

▼途上国は「温暖化の責任は先進国にある」

と反論し、やはり豊かさを追求する。

まるで芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の世界だ。

先進国は犍陀多のように糸を登り、

途上国が追いかける。先進国が

振り向いて「下りろ」と叫べば

糸は切れ、一緒に地獄に

落ちるだろう。

▼地球をサッカーボールに例える

と空気層(対流圏)

の厚さはわずか0.4ミリ。

地球のほぼすべての生命が

、こんな狭いところに

へばりついている。

責任を押しつけあう時ではない

▼生活スタイルを変え、

政治を動かさねば…。

「わかってもできないのが

人間の弱さだ」と

いう弁明はしたくない。

ちょつとばかり

高等知能を持った愚かな

生物で終わらぬため。