ガン細胞の親玉

結局、これが再発の原因だったのか
 
北海道新聞の記事より
 
通常がんの再発は手術後2~3年がピークなので
 
5年たつと一安心となる。
 
診断後5年の生存率は、
 
がん治療の成否を見る指標の一つとなっている。だが、
 
中には再発まで10年以上かかることがある。

先日、乳がんで亡くなった60代の女性もそうだった。
 
病理解剖をしたところ、
 
がん細胞が全身に見られた。家族に聞くと、
 
13年前に乳がんの手術をした経験があるという。
 
つまり10年以上前のがんが転移した上で再発してしまったのだ。

がんの再発を防ぐためには、
 
手術で目に見えるがんを取り除いた後に
 
抗がん剤放射線といった治療を行い、がん細胞を死滅させる。
 
これらの治療は効果が認められている。しかし、
 
わずかながら1~2%に治療が効かない「特別な細胞」がいる。
 
それが体に長く潜んでおり、
 
ある時目が覚めて増殖を始めるのだ。
 
この細胞は治療への抵抗力が強いばかりでなく、
 
目覚めた後は浸潤、転移、
 
増殖の能力がより高い細胞を無数に作り出すのである。
 
このがん幹細胞の存在が分かったのは、1997年のことで、
 
白血病で初めて見つけられた。その後、
 
ほぼ全てのがんにはがん幹細胞があることが分かってきた。

がんは治ったと思っても何年もたって
 
再発することがあるから油断ならない。今医学界では、
 
このがん幹細胞の潜んでいる場所を特定して、
 
親分であることの目印を見つけだして、
 
その弱点を狙う治療法が作られようとしている。
 
(北大医学部腫瘍病理学教授)