野口悠紀雄 先生のブログより

 
日本の輸出は、「崩壊」としか形容しようがない激しい落ち込みを示している。
財務省の貿易統計によると、
昨年12月の輸出総額は対前年同月比で35%の減少となった。
対米は369%減、対中は355%の減だ。
仮にこのペースでの輸出減少が1年間続けば、
それだけで国内総生産GDP)成長率の落ち込みは5%を超える。
実際には、設備投資の減がこれに加わる。設備投資の先行指標である機械受注額は、
11月に前月比162%減(製造業では332%の減)と、
信じられないような減少率を示している。こうした指標をみれば、
日本経済がこれまで経験したことのない大規模な有効需要
落ち込みに直面していることは明らかだ。
日本経済の基本的課題は、円安に依存しない産業構造への転換だ。具体的には、
輸出依存の大量生産型製造業からの脱却である。
アメリカ型金融資本主義が破綻した」と言われる。そのとおりだが、だからといって、
日本の輸出立国モデルが生き延びられるわけではない。
高度成長期から連綿と続いてきた「モノ作り経済」が、
ついに機能しなくなったことをはっきり認識すべきだ。
転換は、1990年代から必要だったことだ。中国が工業化し、
安価な工業製品を大量に生産することが可能になったため、
日本が製造業中心の産業構造を維持できなくなったからである。
日本が過去10年、20年の間に行うべき経済政策の本当の方向はここにあった。
それにもかかわらず、
現実には、金融緩和、円安政策によって従来の構造が温存されてしまった。
本来必要な「構造改革」とは産業構造の改革であったにもかかわらず、
それが閑却され、従来の構造のままで輸出に依存する景気回復がなされたのである。
現在の経済危機は、産業構造転換の好機ととらえるべきものだろう。
ただし、将来の産業構造の具体的な姿は、あらかじめは分からない。
高度成長期のように「政府が将来ビジョンを描き、
それを官民協調で実現する」という時代ではない。
産業構造の改革は、長期的な課題である。当面の短期的課題は、
有効需要の激減による未曽有の不況にどう対処するかだ。
それを放置すれば失業と倒産が激増し、
日本社会は深刻な不安定状態に陥る。これに関して、つぎの3点に注意しよう。
第一に、有効需要の落ち込みは、かつてない大規模なものだ。具体的な規模は、
バブルで膨らんだアメリカの過剰消費が、
どこまで、どのようなスピードで減少するかに依存する。
アメリカの経常収支赤字が現在の半分程度の水準に縮小する」ことが
一つの目安になるが、
それでも減少額は3500億ドル(31兆円)という巨額のものだ。
中国の黒字減も日本の輸出減を引き起こすことになるから、
そうした効果を加えれば、日本の輸出減はGDP5%を超える規模になるだろう。
第二に、有効需要の刺激は、日本や中国のような輸出国において必要なことだ。
輸入国であるアメリカが有効需要を増やすと、輸入が増え、
問題の根本原因であった経常収支赤字が縮減できないことになる。
オバマ政権の景気刺激策に期待する向きは多いが、
アメリカが景気刺激することは、解決の先延ばしにしかならない。
アメリカの消費減少と一時的不況は、問題の基本的解決のために
避けて通れない過程である。
第三に、需要拡張の手段は、金融緩和ではない。
先進諸国が利下げした結果、日本が金融緩和しても円安にはならない。また、
仮にそうなっても、これまでの失敗を繰り返すだけのことだ。
有効需要落ち込みの補填(ほ・てん)は、財政支出増大によって行われる必要がある。
日本では都市・住宅インフラが不十分なため、それを整備する絶好のチャンスでもある。
ただし、問題は、財政支出を拡大しても、
道路など地方の無駄な公共投資になってしまうのが、ほぼ確実なことだ。
都市住民を代表する政治勢力が存在せず、
利益の地元誘導しか頭にない政治家が圧倒的だからだ。
現在の自民党にまともな政策構想能力がないことは明らかだ。
民主党は、先の参議院選でのバラマキ公約を見ても明らかなとおり、
自民党より自民党的」である。政治の貧困が、
原理的には解決可能な経済問題に対して、大きな障害になっている。
それが日本の悲劇である。と書かれている。
ここからが私の意見、円安になっても基本的に
進出した企業は、戻らない。
もう出来上がっている中国の生産装置は止まらない。
加工貿易での利益を上げるは無理。
中国と競争しない分野の開拓が必要!
日本の高度成長期型を踏襲した経済政策は失敗する。
国等の官僚が考え出すものではおそらく駄目。
新しい産業構造の改革?
今度の選挙の700億円はドブに捨てた状況。
 
野口悠紀雄先生の考えにまったく同調します。