日本の未来がヨーロッパへあらわれている
[ロンドン 31日 ロイター] より引用
欧州は現在、長期的な経済成長を弱体化させる
少子高齢化などの人口動態問題に直面しており、
いずれ年金などの福祉を削減するか、福祉を維持するために
増税するかの二者択一を迫られることになるだろう。
すでに欧州のいくつかの国では、こうした問題が顕在化している。
フランスでは現在、140億ユーロに上る年金制度の
赤字を抑制する政府の改革案に対し、労働組合がデモを計画している。
一方、スペインも公的年金制度の新たな改革に着手している。
「何か対策を講じる必要があるとの認識はある。
問題は実行のスピードだ」と指摘する。
景気後退(リセッション)に陥って以降、
300万人以上が失業したことで年金保険料の納付が滞った。
また、移民問題も年金危機を悪化させる要因の1つだ。
外国人労働者50万人以上が2010年以降にスペインを去り、
その上、若年層の多くが職を求めて母国を離れている。
ジェフェリーズのエコノミスト、マーシェル・アレクサンドロビッチ氏によると、
2010年から2013年第1・四半期までに、
労働年齢の成人人口が約2%減少した。
こうした国では中期的には、年金や高齢化
による医療費を誰が負担するのかという
問題が浮上すると同氏は指摘する。
<悪循環>
スペインはまた、景気後退に加え、過去四半世紀は
スペインはまた、景気後退に加え、過去四半世紀は
同国にとってのリスクは、低出生率と若者の海外移住、
急速な労働力の高齢化という組み合わせが、
経済の悪循環を引き起こしていることにある。
アレクサンドロビッチ氏は「リセッションが終わったとしても、
ユーロ圏のいくつかの国では、一般に認識されているより
打撃は長く残る」との見方を示した。
また、前出のヒュー氏は、労働人口が減少する一方で
年金受給者は増加するため、将来の年金受取額の
減少に備えて国民は消費より貯蓄に向かうと指摘。
その結果、景気回復が阻害されて税収も落ち込むとし、
「想像していた以上の年金改革を行う
必要に迫られるだろう」と語る。
<出生率の低下>
欧州の多くの国では、外国人労働者がいなかった場合に
人口を維持する上で必要な合計特殊出生率(TFR)2.1を
30%以上低下した。2011年のハンガリーのTFRは1.2、
人口統計学者が危険とみなす水準にある。
ドイツでは過去1年で、国内の労働人口が7万人減少。
アレクサンドロビッチ氏は、同国の昨年の雇用の伸びは
経済成長見通しは暗いと指摘。
現在1.5%であるドイツの潜在成長率は、
高齢化により2020年後は1%を下回る水準に低下する。
一方、ドイツに比べると明るい人口構成を持つ
フランスと英国は2050年までに、
経済規模でドイツを上回る見通しとなっている。
減り続ける労働者で多くの年金受給者を
支えなくてはならないという世代間対立は将来的なリスクとなるが、
すでにドイツ経済の一部には影響が及んでいる。
ダグラス・ロバーツ氏によると、高齢化が一因となって
同国の自動車販売は減少しており、自動車産業全体の
設備過剰に拍車をかけている。同氏は「年金状況の変化同様、
自動車のような主要産業の再編は難しく、
組合と政府から大きな抵抗にあうだろう」と指摘する。
財政破綻で明らかになったように将来の年金運用を
困難にさせるだけでなく、特に景気後退以降に
蓄積された公的・民間債務の返済を難しくさせるだろう。
欧州委員会の推計によると、欧州の雇用者数は
2010?2030年に500万人(2.5%)減少する。
また、スペイン銀行(中央銀行)は昨年、富裕国は
2012?2021年の10年間で年間経済成長率が
1%ポイント以上低下するとの見通しを示した。
欧州がこうした問題に対して立ち上がり、
社会保障制度をうまく機能させることはできるだろうか。
ロンドンのコンサルティング会社ロンバード・ストリート・リサーチの
リー・スキーン氏は「高齢化に伴う支出と労働力の
低成長もしくはマイナス成長が重れば、
政府や金融セクターの改革を行わない限り、
先進国の大半は破綻への道を突き進むことになる」と分析している。
(原文執筆:Alan Wheatley記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)
日本についても、要するに対岸の火事ではない